市場に行ったら、あなたは何が見えるだろうか。商人たちの姿が目に入ったとすれば、それは今も一般的に見られるものだろう。しかし、市場が我々にとってお金よりも多くのものをシェアし、出会わせてくれる場でもある、と考える人はいるだろうか。私にとって、ここは大家族。味を調える人、植える人、作る人から成る台所。ここは、私の考える「食」を育む場所。ルンアルン学校の放課後市だ。
毎週木曜日、子どもたちはこの広大な台所に集まる。特にこまごまとした取り決めなどは無いまでも、子や孫への愛情や想いが込められたこの木曜夕市は、子どもたちが放課後お腹が空いたらお菓子や料理を買って食べることもできる、安心して楽しめる場所なのだ。
ここにあるもの、それはごく普通の、お菓子や食べ物で、心をくすぐられるたいそうな名前など無い。ウィタヤーおじさんのフレッシュココナッツジュース、焼きパフ、絞りたてフルーツジュース、有機果物のアイスクリーム、出所の分かる無農薬素材のお惣菜。そもそもなぜこれほどまでに、放課後市のためにいろいろと心を砕かないといけないないのだろうか。
答えは、「食」は、学校が重視しているテーマのひとつである、ということだ。この学校はバンコクのトップレベルにある私立学校であるたけでなく、「調理」は、生徒のルーチン義務として設定しているのだ。そう、ここの生徒たちは、幼稚園から小学6年生まで、先生と一緒に自分たちで有機食材を調理して、昼食を作らなければならないのだ。そうなれば必然、学校内に持ち込み販売を許可される食べ物は、安心できるものばかりになる。なぜなら、その品質は、学校側が選別するほかに、保護者達による非常に厳しい選別チェックをパスしたものだからだ。
こうして、ここの木曜市は、最も安心して買って食べられる市場のひとつになった。どうしてか、って?買って食べるお店の全てについて、素材の出所を知ることができるからだ。例えば、ココナッツジュース屋さんのウィタヤーおじさんは、毎週木曜日、遠くナコンパトムから車を走らせ、ココナッツをその場で切り、ダンチクという植物由来のストローを挿してくれる。ウィタヤーおじさんは、このジュース販売で出た生ごみを、毎回必ず家に持ち帰っている。おじさんが言う、「同じ有機食材から発生したゴミだから、これらのゴミが良質な堆肥となるんだよ。土に混ぜてすぐに微生物の餌に早変わりするんだ」というのがその理由だ。
ジンター・アイスクリームでは、オーナーが砂糖やその他主な成分を有機食材から調達している。毎週、旬の素材によってそれぞれ違った味のアイスクリームを用意してくれる。そして
このアイスクリーム屋さんの名前になっている子ども「ジンダー」もまた、この学校の生徒なのだ。なるほど、一段と心が込められているのも頷ける。自分の子どものために作るように作られたスイーツが販売され、生徒たちも皆、こうした安全なアイスクリームを食べることができているという、非常に幸運なことだ。
焼きパフ屋さんでは、バナナ、ココナッツ、サツマイモ、タロイモ等、餡の種類が様々で、巷で売られているパフの粉は、ショートニングが混じっているので不安な気持ちになるが、この店のものには混じっていない。この店のパフは、弱火でゆっくりと焼かれ、それをバナナの葉で包む、なんとも香ばしい香りが辺り一面に漂い、子どもたちは、このパフ目当てに長蛇の列で並んで待つのが常だ。
これらはほんの一例に過ぎない。このほかにも、この学校では、保護者と生徒が食物を入れる容器や水筒を携帯し、買ったものを入れたり、環境に優しい容器を用意する店も出て来た。一度使って捨てるというプラスチック容器は使われていない。本当は、ここがこうしたことをやり始めたところではないのだが、私はこの市場を、「食」について考え行動する、始まりの市場にしたいと思う。私は、大人がいかに育てるかよって、子どもたちが食べたり捨てたりすることを選択する行動が影響される、と考えている。この郊外の学校だけが行動を起こしたのではない。しかし、「食」や「エネルギー消費」、「ごみを自然に還すにこと」ついて大人が気
付き、意識を高めたことから広がって行った。だからこそ、この「始まりの市場」をモデルに、全ての学校、オフィスにおいて、こうした質の高い活動を1週間に1度でもするようになれば、安全な食事を食べられるようになる人が、また一部増えるのでは無いかと思うのだ。あなたはどう考えるだろう?
ライター
ナタポーン・ピンペット
クリエイティブ/話し手
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