文字を介して料理について語る、プレウことプレウパイリン・ブンシリさん。フードコラムのライターだ。ストーリーを語るだけでなく、プレウさんの紡ぐ文字により、料理に命が吹き込まれる。以下の7つの質問を通して、単に料理の話だけでなく、彼女について多くのことを知った。
BKKMENUのライターとしてお仕事される前はどんな仕事を?今の仕事をしようと決めたきっかけは?
以前は若者向けのライフスタイル雑誌、Seventeen Thailand Magazineや旅行雑誌BAREFOOT Magazineで記事を書いていました。でも、2016年にそれぞれの雑誌が相次いで廃刊になり、世の中がデジタルコンテンツの時代に入ると、新しいプラットフォームのライフスタイルWebマガジンのBKKMENU でライターとして再出発をすることを決意しました。これにより読者によりアプローチすることができ、これによってライターとしての仕事の幅が広がるようになりました。
フードライターと美食家の間でどんな関連性がありますか?
私の考えでは、美食家の多くは、美味しいものが食べられる、同様に美味しいもが好きな人たちにその美味しさをシェアできるというところに幸福を見出していると思います。しかし、私のように、食文化の多様性の視点から興味を持っている人にとって、料理とは、人々と知り合える繋ぎ目の働きをしてくれるものです。な
ぜなら、それぞれの料理の美味しさの背景には、素材や作り方、見た目を美味しく見せるデザイン等に由来するものがあり、この料理がこの店を象徴するものだ、と示しているからです。これは誰でも触れることのできるひとつの魅力で、味覚や嗅覚を通じて、最終的に、食べる(食べてみたい)人になるということです。だか
ら「ライター」と「美食家」は、かなり関連性がありますね。美食家の役割とは、単に料理を食べるというより、美食家として伝えることですよね。読者に何らかのパッションを与えて、知り得たストーリーやそれぞれの料理に隠された魅力を掘り起こしたこと、それこそが、私が精いっぱいプレゼンテーションしようと思って
いることです。
BKKMENUで仕事を始めて現在に至るまでの間に、タイ人の料理を食べるトレンドはどんなふうに変わったと思いますか?
当初読者のフィードバックとしては、カフェに行く人が多かったです。特に、海外の店の雰囲気や料理のスタイルを持ち込んだ新規でオープンした店が当時は多かったです。例えば韓国のスタイルや、焼肉、タピオカパールミルクティーのトレンド等、一気に広まりあっという間に終わって行くトレンドですね。でも最近は、
タイ人の食事にも幅の広がりが見られるようになり、オリジナルに回帰するというという現象が見られるようになっています。多くの店で、目新しいクリエイティブなものを目指し、タイ的な要素と海外の潮流とをミックスさせ、ストーリーを持たせる。地域の素材を選び、競い合って以前よりもより建設的なプレゼンテーショ
ンをしています。しかし、食べることにおけるトレンドでいうと、ハイエンドでミシュランスターが付くものでも、ストリートフードでも、現代は、以前と比べて堅固なスタイルや目につく食べ方はありません。SNSによって、自由に情報交換をすることが出来、味や雰囲気について知ることができているからです。この多様性
が、現代の食べるということにおけるトレンドを最も良く定義していると思い
ます。
フードトレンドセッターということばについてどう思いますか?また、ご自身をフードトレンドセッターだと思いますか?
現代人がオンライン上でシェアするプラットフォームのスピードによって、新たな食べることのトレンドセッター、つまり「フードトレンドセッター」を数多く生み出しています。フードトレンドは、ファッションと同じで、多様性が見られるようになると、堅苦しい枠がなくなり、人それぞれの食事をするライフスタイルに
よって異なるようになります。また、自分自身をフードトレンドセッターだと思ったことはありません。自分の書いたレビューの全てを読者がフォローして食べに行ってもらわなければと思っていないからです。オンライン上で、トレンドを誘導し、メディアの読み手の流行を掴んで、イイね!やシェアの数を増やさなければな
らない、などという競い合いがあることは事実です。しかし最終的に、正しいこと、中立であること、読者が自由に決めて選択できるようプレゼンテーションすることこそ、無視してはならないことだと思います。BKKMENUの特徴を持たせつつ、自分自身の仕事のスタンダードを守り、時代に合った中立のメディアとし
ての役割を果たさなければなりません。
ライターとしての仕事をするうえで、料理を作る素材の出所について掘り下げたことはありますか?何か興味深い事例はありますか?
そういうレストランはたくさんあります。一番面白いと思ったのは、「ラーン・ソーン」というレストランで、Fine Southern Cuisineというスタイルの南部タイのレストランです。シェフが失われつつある南部地方の素材を用いてメイン料理に仕立て上げるんです。スタッフが南部各県・各地域に赴いて素材を探し求め、その
地方に伝わる昔ながらの知恵を、現代の調理テクニックと合わせ使うことで、最も素晴らしい南タイ料理の一皿ができあがります。例えば、パッタルン県のイスラム教徒により飼育された6才の乳牛を使うことで、肉が口の中で柔らかくほろほろ溶けるような食感になります。また、豆乳・揚げパンアイスクリームのようなデザ
ートでは、海辺に植えられた植物のシロップのみを使い、シーソルトキャラメルのような、塩味を帯びた甘みのある自然な味のシロップにします。それぞれのメニューの背景や作り手の熱意を知ると、実際に試食した時には信じられないくらいの美味しさを味わうことができ、読者にその美味しさを伝えたいという思いに駆り立
てられるんです。
ライターとしてでなく消費者の一人してレストランに言いたいことは?
すべてのレストランに対して、料理の質を重視してほしいと思います。味、清潔さ、量や良質のサービスを提供するということも。これらが揃っていれば、あの店で食事したいな、と思わせることは難しいことではありません。雰囲気やその他で違いを見せるのは、二の次の話です。
最後に、本当の料理だと言うものについて、2行でレビューを書いてほしいとリクエストしたら?
自分が選んで食べて、空腹を満たし、お腹が気持ちよくいっぱいになるもの。そして植物性・動物性の各種素材を用いてちょうど良いバランスの味に調理され、身体への栄養にもなります。
料理について語る人の重要な役割とは、人生にとってエネルギーとなるもののストーリーを伝えること。時代とともに食べることの価値は変わっていくものの、重要なのは、料理の価値や素材の出どころは依然主要な要素として、それぞれの「料理」に意味を持たせている。特に今日では、多くの人が健康を重視するようにな
り、安全な料理を食べるというトレンドによって、オーガニック野菜が注目され、持続可能な農業が見直されるようになった。ライターの仕事と農家の仕事は、一見遠く離れたもの同士であるように見えるが、奇跡的なことに巡り巡って最終的には繋がっている。プレウさん自身も、この奇跡を生み出す一人のライターだ。消費
者から農家へ、文字が繋ぎ役となって。我々もプレウさんが文字を使って今後繋いでいくであろう料理について書かれたものをフォローしていこう。
ライター
ナタポーン・ピンペット
クリエイティブ/話し手
インタビューした人
プレウ プレウパイリン・ブンシリさん
BKKMENUライター
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