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食べ物で癒され 人間も癒される


ここ最近、ある言葉が流行っている。それはどんな単語にも「セラピー」という単語を付けた途端、これは良さそう、試してみたい、と価値が高まる魔法の言葉だ。特に今年2019年に流行った言葉として、「フードセラピー」が挙げられるだろう。えー?ナニコレ??我々が食べているものでも癒されているはず…空腹が。いや、それ以上の話で、最近突然沸き起こったものではなく、何百年も前からあったものなのだ。


ソーシャルネットワーキングや医療業界によって、我々の目につくところ、耳にするところとなっていなかっただけのことだ。そこで、方々から知り得た「フードセラピー」についての話をしてみたい。




日本と味噌


「味噌」とは、蒸した大豆を細かく潰し、米麹と塩を混ぜて発酵させたものだ。古代、味噌は、防腐のため乾燥した塊であったが、現在では、箱詰めし、冷蔵される。これも食べ物を長期にわたって保存する手法のひとつだ。一杯の味噌汁には、例えば、炭水化物、タンパク質、脂質等、栄養成分に満ちあふれている。医療界でも、味噌の薬としての素質について、味噌の発酵過程でラクトバチルス菌が働くことで、消化効果のみならず体力アップを目指している時になどには栄養豊富で高いエネルギーが得られるのが素晴らしい、とお墨付きだ。発酵中、米と大豆中に含まれるタンパク質、脂質、炭水化物がバラバラになり、アミノ酸、脂肪酸、そして分解されやすくなったブドウ糖へと変化する。このため、「味噌汁」は、消化システムが良好でない人にとって特に相応しい食事と言える。「味噌」は、昔ながらの胃酸を抑える薬と同じであり、緊急的に症状を緩和させる。また、甘い味で色が薄い味噌の中に多く見られ、殺菌されない微生物は(ほとんどが2~8週間発酵される)、腸の中に入り込み、これらの酸を好む微生物は、健康を増進し、丈夫にする。喫煙者は、味噌によって、ニコチンが身体から迅速に排出されると信じており、地方に住む日本人は、今なお味噌入りのお湯を喫煙用パイプの洗浄に使うという。味噌は医学的に最も効果的かつ味の良い日常食だとされている。



中国


「ポー」は、特殊な料理だ。昔から伝わるものや、中国式栄養療法の専門家により生み出されるレシピや手法やがある。ポー料理は、健康の維持・予防を重視し、家庭で作って食べることができる。中国式料理の例を紹介しよう。


「カボチャの卵炒め」 これは、塩漬け卵の黄身のみを蒸して使い、炒め油に混ぜ合わせる料理だ。皮を剥いて短冊切りにしたカボチャを油で炒めて火を通し、取り出す。潰した卵の黄身を油を引いたフライパンに入れ、香りが出るまで炒める。その後再びカボチャを入れて炒め合わせれば出来上がり。お通じを整え、お肌や夜盲症にも良いとされる。


「牛肉の醤油炒め」 牛肉を千切りにし、中火のピーナツオイルで揚げる。揚げ油から引き揚げ、休ませておく。フライパンに油を引き、薄切りにした分葱、生姜、みじん切りにしたニンニクを入れて炒め、酒、酢、醤油、塩、水を入れ、煮つめて、揚げた牛肉の上に掛ける。血行促進、滋養強壮の効果があるとされている牛肉の醤油炒めの完成だ。。


韓国


美容で有名な韓国、従ってこの国のフードセラピーでも、アンチエイジングフードが必ずあるだ、と予想されるだろう。そう、お馴染みのキムチだ。これは、古くから人々の知恵で作られてきた料理だ。白菜、玉ねぎ、葱、きゅうり、にんにく、生姜、赤唐辛子を塩水に浸し、その後調味料を混ぜ合わせて発酵させる。冬の間に生野菜の代わりに食べられ、一年を通して野菜を食べるための保存方法として用いられる。食欲が増進されるだけでなく、年齢よりも若く丈夫な身体を作る助けとなる。キムチの発酵過程では、乳酸菌飲料に含まれるものと同じバクテリアのラクトバチルスが得られ、腸の健康を整え、ヒトが自力では作り出せないビタミンB12を大腸の中に作ってくれる。ほかにも、キムチに含まれる赤唐辛子のカプサイシンといったファクトケミカル物質は、脂肪の燃焼に、玉ねぎやにんにくのアルリシンは、血液中の血栓を溶かすのにそれぞれ効果的であるという。また、それぞれ心臓や血管の病気の原因となるコレステロールや中性脂肪を減少させる働きもある。


タイ


海外の国について話してきたが、タイについて触れないわけにいくまい。もちろん、タイにだってある。各地で栽培する地元の素材で、身体を癒してくれるものがある。ここでは3つのメニューについて話したい。


「ゲーンリアン」 これは、へちま、かぼちゃ、とうもろこし、カミメボウキの葉、他にもキノコ類やにんじん等、色々な種類の野菜を入れるため、栄養価の高い料理であると言える。動物性たんぱく質としては、海老や豚肉、鶏肉を好みで入れる。それぞれが薬としての効能があり、香りも良く、非常に美味しそうな料理となる。例えば、カミメボウキの葉は、発熱、気管支炎、膨満感の解消、かぼちゃは滋養強壮や視力回復に、へちまは心臓、とうもろこしは胃腸に、という具合にそれぞれ効能がある。


 「サダオ」は、タイ人にとって古くアユタヤ時代に遡って馴染みのある料理だと言える。中部タイの人々は、サダオをナンプラーで作った甘辛いタレに付けて食べる。こうすることで、苦みを抑えることができるからだ。また、焼き鯰と食べ合わせることが多い。サダオの効能としては、解熱、口内炎、去痰、便秘解消、消化促進に効果があり、体内の四元素のうちの水、火に効果的である。


「ミアンカム」 これは、多くの人が好物とする料理だ。ミアンカムは様々なハーブや野菜から成るため、効果効能は述べるに余りあるほどで、香りの良いナムチムというタレをかけていただく。家族全員で食べられる料理だ。生姜、ライムの皮によって四元素の火が促進され、ライムやチャプルという葉は四元素の水、唐辛子や赤玉ねぎは四元素の空気、ココナッツ、干しエビ、砂糖は四元素の土にそれぞれ効果的である。四元素だけでなく、去痰や整腸作用、食欲増進、寄生虫排出等にも良い。


とにもかくにも、我々は食を薬として用いて来たのだから、その食物に化学物質等の毒を増やすことなどするべきではない。近頃ようやく、安全な農業を奨励し、オンラインや実際の販売所での販売網を確立し、無農薬の素材を料理に使うようになってきたところだ。我々は、最終的には、変えることができる。料理で癒され、人間の考えも一緒に癒されるのだ。



 

ライター

ナタポーン・ピンペット

クリエイティブ/話し手



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