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スクンビット 国を離れて暮らす人々のコミュニティ 遠く彼方から来た素材で作られた料理


つい最近の話だが、あることがきっかけで、スクンビット国に少しの間滞在しなければならなくなった。スクンビットを「国」と呼ぶのは、何も間違ったことではない。というのも、このスクンビットという地域には、多くの文化や料理、品物の選び方を反映する考え方があるからだ。外国に行かずとも、あらゆる国の料理が、このスクンビットという場所に集まっているのだ。


まずは知り合ったある日本人ついてお話しよう。夫のタイ駐在に帯同してタイに住む女性で、彼女の子どもたちは最低6年タイで学校生活を送らねばならない。一般的な日本人の食文化とも言えるが、良く見ていると彼らは家の外で食事を摂ることをあまりしないということに気付く。このため、夫を仕事に送り出し、子どもたちを学校に送り出した後の日本人の主婦グループをしばしば見かける。スーパーマーケットで落ち合う約束をしているのかもしれない。スクンビットには、様々なスーパーがあるが、日本人のお母さんたちのほとんどが、日本のスーパーや、日本から輸入された生鮮・冷凍食品を取り扱う店を利用している。そのうちの例をいくつかご紹しよう。


「誠屋タイランド」は、冷凍食品、食材、調味料等を日本から輸入し販売している。2005年にオープンしてから13年間になる。顧客の多くが飲食店業者や日本人の主婦である。ここには、日本から輸入した、冷凍の魚、エビ、イカ、貝、ソーセージ、ベーコン、ソース、豆、胡麻等が取り揃えられている。冷凍したものであるにもかかわらず、多くの日本人の主婦や日系レストランから支持を得ている。タイに住む日本人は、ほとんど毎日自炊するためであろう。また、この店では、冷凍野菜や冷凍果物も扱っている。大容量サイズの調味料を買うとしても、割安となるため、毎日料理をする日本人の主婦にとって珍しいことではない。


「トンロー日本市場」は、エアコンの効いた市場で、午前9時から午後6時まで営業している。午前中は業者向け、一般客は正午から購入することが出来る。ここに来ると、あたかも日本の市場に来たかのように感じられる。素材の多くが日本から輸入されたものであり、店内を歩いていてもすれ違うのは日本人ばかり。主に牛肉、魚介類、青果類が取り揃えられている。



タイ人のスタッフが適宜説明するためにスタンバイしている。エアコン付き生鮮市場である上に、調理のオーダーも出来、2階にはイートインコーナーもあるため、多くの日本人がこの市場を行ったり来たりしている。この市場の食材の価格は、運賃や季節によって変動する。ここに住む日本人は、自国の旬に則った料理を食している。タイまで運ばれる日数を考慮に入れてタイまで最も短時間で運ぶことで、食材は最も新鮮な状態に保たれる。


タイで展開する日本式の食品を取り扱う日系のフジスーパーは、以下の通り4店舗ある。


本店 スクンビット通りソイ33/1

2号店 スクンビット通りソイ39シティリゾート39 1階

3号店(エクスプレス)スクンビット通りソイ39シティリゾートアネックス1階

4号店 スクンビット通りソイ49 シティリゾート1階


実際には、フジスーパーでは、日本製品のほかに、タイの製品も扱っているが、タイ製品の割合は、日本の肉や魚介類の冷凍品やお菓子類などの輸入品よりも少ない。しかし、野菜、果物、卵、肉類等、タイの有機食品の多くのブランドが販売されており、日本からの輸入品に劣らないくらい売れ行きは好調だ。この店には、日本の主婦たちが料理することができるような商品のほかに、和食の惣菜やタイ料理の惣菜までも販売されている。スペースの都合上料理することができないひとりで住んでいる人向けになっているのだろう。



3つのスーパーマーケットを例に挙げたが、ここではタイ語が聞こえてくることがほとんどないくらいだ。彼らの生活の質はどうなっているのだろうか?自分で料理を作ることで、防腐剤や化学調味料等が無く安全だと安心できるから、良いことではあるのだろう。しかし、肉類や魚介類の冷凍品を食べる子ども達のことを考えると、少し不安になった。どんな配送過程を経ているのか、何か特別な加工を経ているのではないか?そこで、この問題について日本人に聞いてみた。なぜ自国から輸入された食品を選んで食べることにしているのか?答えは、馴染みのある味だから、というものだった。また、その日本人は、タイの肉類には抗生物質が投与されていると聞いたことがあり、変な臭いがするとも言っていた。こうした理由から、日本の輸出規準の方に信頼を置いたというのだった。


タイにおけるオーガニック素材の信頼について思うと、こうしたコメントに悲しみを覚える。しかし、その人は、鶏肉は良くなっている、と言っていた。タイの農家も安全性の向上に努め、ニュージェネレーションも知識を生かして安全な農業に取り組む人が増えている。こうしたことは良い傾向だと言えるだろう。


タイ人として、こうした動きを後押ししたい。全ての関係者が利益を得られるように。タイの農業も素材の安全性を向上し、販売することができるようになった。そして、タイの子ども達も、外国から親について来てタイに住むようになった子供たちも、食物の栄養を享受してほしい。冷凍品に頼るだけでなく、旬の安全な食べ物を食べられるようになってほしいと思う。



 

ライター

ナタポーン・ピンペット

クリエイティブ/話し手



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