私も新世代農家のひとりとして、有機農業に勤しんでいる。SNS上で友達と知り合い、会話を交わしてきた。ネットワークの友達の畑の素材で作った料理の出所を学ぶ活動をしたりしながら、親交を深め、収穫後にはフェイスブックメッセンジャーを通して収穫物の売買をすることが出来るようになった。納品についても、自ら運搬することなく、巷の配送サービスを利用して発送する。生産者と消費者が「友達」であるから、他所の商品が混入する心配も無い。
箱を開けるとそこにはやさしい味わいの有機野菜が詰まっており、人々は食べたときの感動や幸せをSNS上でシェアするようになる。するとその友達の間で安全な食物のニーズが広まり、我々農家グループの間で、「オルタナティブ・マーケット」を開催する。これにより、安全で安心できる商品を消費者が選んで買うことができるようになるのだ。この市場は、出所の分かるものを食べて生き、顔が見えるものを食べて生き、意味をもって食べて生き、環境を無視せず食べて生きる、という意味で、「適時剤適所」という名前がついている。
出所の分かるものを食べて生きる…このオルタナティブ・マーケットに生産者が商品を売りに来るには、厳正な審査を通らなければならない。我々のマーケットには、エコ農産物、安心な畜産物、有機水産物、安全な加工食品、安全な化粧品、公正な売買の6つのグループから消費をカバーしている。生産者や売りたい人は、マーケットの運営側に対し、種まきからの生産過程や運搬、衛生的な加工について等、申込書を出して詳細に渡り申告しなければならない。それだけでなく、こちら側が生産現場に出向いて、「助け合う」ことが出来るかどうか確かめに行くこともする。消費者に対して規準を満たす安全な商品であるかどうかの選別は、同じ形 態の商品を生産した経験のある人がチェックを担当する。ファーム、畑、果樹園、厨房…選抜を通ったものについては、フェイスブックページ上で発表し、消費者は、発注やプレオーダーする前に、それぞれの食物の安全性の出所を知ることができる。
顔が見えるものを食べて生きる…オンライン上のコミュニケーションではいまいち安心できないという場合でも、消費者の皆さんに、籠や布製バッグを持って、ゆったりとした雰囲気の中、ミュージシャンによる心地よい音楽に耳を傾けながらマーケットの雰囲気を味わってもらおうと毎月最終週の週末土日に開催している。これについて詳しく聞いてみたい、と思うものがあれば、恥ずかしがらないで、「友だち同士」のように気軽に話しかけて欲しい。畑やファームのオーナーや加工製品の製造者らが、「適材適所」マーケットの素材を用いて料理を作り、フランチャイズの加工食品とは異なる、安全で味の良いものが出来上がる。気になるお店の料理を食べて見たいと思えば、ご自分の容器を売り子に差し出してもらっても良い。様々な地方からの野菜、果物、米、肉類を都会の消費者に向けて結ぶ懸け橋の役割をするような人もいれば、化学物質の無い石鹸やシャンプーを生産する人もいる。自分で用意した瓶にシャンプーのレフィルを入れることもできるのは興味深い。
意味をもって食べて生きる…畑やファームの安全な製品を非公式に販売するだけでなく、我々は、この地球にやさしい考え方を基に、自分の力で、かつ自然に対して負荷を負わせるようなことをしない方法で、分かち合う社会の創出を目指している。お父さんやお母さんが子どもの手を引いて市場で品物を選んで買うようにしていれば、それは人類の次の世代へと引き継がれる価値を持つ種をまいたものと同じことになる。我々の食物や考え方をシェアし合い、次のシーンは無農薬の生鮮市場、その先のシーンは混合有機農業の畑。野菜を植える畑の他に、有機肥料、アヒル・鶏小屋、そして大きな木が人の通り道をその涼しい影で覆う、全ての人に触
れてみて体験して欲しい。
環境を無視せずに食べて生きる…市場の店先でも販売している香りの良いココナッツジュース。ダンチクでできたストローを通してあっという間に飲み干してしまい、残ったのはココナッツの殻。この殻を畑の中の有機肥料の所に持って行って捨ててもらえば、カチカチに硬かったココナッツの殻が腐敗し黒く柔らかくふやけ、土中の微生物の格好の餌となる。食べ残しや食べない野菜の茎などの部分も同様に有機肥料へと生まれ変わる。しかし、プラスティックバッグだけは分解できないので、所定の分別かごの中に捨ててもらうようにしたい。興味深いのは、この市場が終わってみると、一般の市場に比べてプラスティックのゴミや汚れが少ないことに気づくことだ。それはすなわち、我々が活動をして考え方を広めようとしていることは、さほど困難ではないということだ。しかしながらいずれにせよ、プラスティックが現代の人間にとって役に立つものであることは否めず、断ち切ることも出来ない。この市場で分別したプラスティックゴミは、リサイクル用に買い取られるところに持ち込まれる。行きつく先を海にすることなく、我々は、プラスティックバッグや卵のプラスティック梱包ケース、そして使用済みの紙をリサイクル用に消費者が持ち込んでくれたものを選別する。プレオーダーの受付開始が間近に迫っているが、もう一度冷蔵庫の中をチェックして、安全に長く保存しておけるものは保存しておく。
経験から、一定の基準を満たした「適材適所」マーケットの肉類は、冷凍 庫で3か月以上保存できることが分かっている。また、オーガニック野菜のうち、葉物野菜は、冷蔵庫の中で2週間、ニンジンやビーツルートのような根菜類は3か月保存することが可能だ。果物は、種類によって保存期間は異なるが、「適材適所」マーケットの厳選された商品は、一般で販売されているものよりも長い期間保存が可能なのは確実である。保存用に冷蔵庫の電気代は上がるかもしれないが、市場に通う頻度が減り、交通費は減るだろう。良い健康状態が得られ、自分で作った美味しい食事が食べられる。事前に計画を立て、我々のオルタナティブ・マーケットの情報を継続して入手し続けるだけで、値打ちのある人生に変えることができると言えるだろう。我々は、安全な食物を手に入れたいと思っている消費者の皆さんにとって、
生活の質をより良いものにすることができ、健康を維持することが出来るようになることを願っている。無農薬の食物から始まる健康、良いバランスで食べることをすれば、太らず、食物栄養も不足しない。料理をするのが好きではなかった人でも、我々の素材を以てキッチンに入ってみれば、隠れた料理の才能を見出すことができるだろう…私と同じように、財布と籠を持って、我々のマーケットをぜひ訪ねてみてください。
ライター
ナタカナーン・プリ―チャーボリスットクン(ヌン)
農家
安全食品生産者
ナチュラルシャンプー・石鹸生産者
自給自足分野講師
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