ここまでで消費者と仲買人について触れて来たが、取り上げないわけにいかないのが、ドラマOPEN MIND PROJECTのBELIEVEの回の農家の人々だ。若い男女の恋の話ではなく、農業を営む農家の温かい愛情に焦点を当てる。LOSTの回でカメラマンを演じたナット・キッジャリット演じる田舎に戻った「ナット」と、ワラーンカナーン・ウタヤーゴーン演じるナットの幼馴染で農家の娘「ブンプルーク」とのやり取りを描いたものだ。
BEILIEVEの劇中で、ソーラニット・サンモンコン監督の解釈により、農業を営むということへの愛情が描かれた。農作物が、安全に無農薬で育つように心を込める愛情だ。それはまさに、地球や人間に悪影響を及ぼすことの無いように、土や水、空気の中に化学物質を混ぜない、有機農業そのものだ。
ストーリーは、ナットが田舎に戻ってきたところから始まる。ナットの父親が農作物に毎日のように散布していた化学物質が体内に蓄積され、病気になってしまったためだ。こうした悲しい出来事は、実際に新聞などで報じられているのが頻繁に見受けられる。散布されたものが空気中に霧状に混じりこんだり、皮膚に直接浸みこんだりすることで、農家が化学物質によって命を落とことになる。背中に化学物質を背負い、それが漏れて背中を伝い皮膚から血管に浸透してしまったことで亡くなったある農家の痛ましい事件が思い出される。
この完璧主義は、スーパーマーケット内でのことに留まらなかった。ティティには、妻と娘があったが、全ての料理はPerfect Greenの青果であったが、その青果が安全かどうか確認することはできなかった。農薬不使用で植えられた青果は、ティティの完璧主義の意味する範疇にはなかったからだ。
子どもの免疫力は、大人同様に高いものではない。食物に含まれる汚染物質が、ティティの娘「フェーリー」 の身体に入っていき、病院に入院しなければならないほどになった。そこでティティは初めて気が付いた。自分がしてきたことは、真の完璧主義ではなかったのだ。
タイの各地で行われている農業だが、その農家の多くは自分たちが育てた農作物を口にすることはない。化学物質が蓄積されて危険なものであることを知っているからだ。
こうしたことが起こるのはなぜか?
原因について考えるならば、巡り廻ってその発端は我々消費者にあるのではないか。見た目に美しい農作物が食べたい、年中様々な種類の野菜が食べたい、という、我々消費者ではないか。
有機農業の世界では、見た目が美しく、一年を通して収穫できるようなものなどあり得ないのだ。消費者はこの点を理解しなければならない。仲買人もこの点を理解しなければならない。安全な農作物を求めるならば、この真実を受け入れなければならない。そして無農薬の野菜に対して、通常より高い金額を支払うことを受け入れなければならないのだ。それはなぜか?農家は、収穫までの間、害虫等により損害を受けるリスクがより高まるからだ。花を早く咲かせ収量を上げるような促進剤を使わないということで、収穫までの時間がかかることになる。しかし、そのおかげで、安心・安全なものが得られるのだ。
地方に赴いて多くの農家の人々と会話をしたことがあるが、その中でも興味深かったのが、以前は化学物質を用いて栽培していた野菜は食べたいと思わなかったが、有機農業に切り替えてからは、安心と安全を手に入れることが出来、自分の栽培した野菜を食べるようになった、というものだ。消費者に対しても誇りを持って届けられる。価格は少し高くなるものの、消費者が受け入れられるような価格に近付けようと農家も努力をしている。新時代の農家たちも、通信テクノロジーを駆使して消費者と直接やり取りを交わし、仲買人を通すことで発生するコストを減らそうとしている。
「テクノロジーをうまく使えば、メリットが生まれる」
これは、OPEN MIND PROJECT のBELIEVEの劇中で、テクノロジーに警戒心を持つ幼馴染のブンプルークに対して、ナットが発した言葉だ。ナットは、こうしたテクノロジーを利用して、収穫物を消費者に販売し、有機農業産物は販売できるのだ、とコミュニティ内の農家たちに自信を持たせた。農家が自信を持てたことで、我々消費者が安全に食べられる有機農業の作物の栽培がさらに促進されていく。
化学物質を用いて間接的に他者を傷つけたいと思っている人などいないのだ。そうでしょう?
OPEN MIND PROJECT - BELIEVE
ライター
パーラニー・ルートワタナーソンバット
フリーライター
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