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海外からインスパイアされる農業:湯布院#3



湯布院では素材で何を作っているのだろうか…


このコラムは、料理のレビューではない。素材の加工において、付加価値を高めたり、資源の管理をする上で、インスピレーションを感じてもらいたいと思う。そして湯布院に来たら、一度はこの地の素材を食べて見て欲しい。ザ・フォーシーズンズ・セレクションという店をご紹介しよう。名前からして四季折々の良いものがありそうに聞こえるこの店は、その名の通り、野菜や果物を加工してジャムや漬物のブランドにすることで、素材の命を伸ばしている。普段、日本のレストランで肉類を食べると、様々な種類の漬物が添えられているのを目にする。これこそ日本人の間に伝わる昔ながらの知恵であるとも言えるだろう。タンパク質を摂る際には、こうした副菜を用意する。こうすることで、漬物に含まれるプロバイオティクスが腸の微生物の餌となり、消化を助け、腸内環境を整えることにつながるのだ。形の良くないものや売れ残ったものでも、子どもでも食べられるような甘酸っぱい漬物をデザインされたパッケージに詰めれば、さらなる付加価値が付く。



この町の乳加工品も面白い。北海道のように名前も規模も大きくないものの、この町の乳加工品について触れないわけには行かない。オシャレなスイーツの形での乳加工品やパン屋さんで使われるバターなどにすることにより、付加価値が付いている。生乳を使ったり、店独自の新製品という形で取り入れたり、それぞれのお店がどうやっているいのか、以下に見て行きたい。


ミルクソフトクリーム 砂糖の入ったソフトなタイプのアイスクリームで、カップ又はコーンに載せていただく。この店では安定剤を使用していないため、非常に暑い日には急いで食べないと、あっという間に溶けてしまう。


ミルクソフトクリーム コーヒーシロップがけ ミルクソフトクリームにコーヒーシロップが掛けられたもの。コーヒーの苦みがソフトクリームによく合う。またそこでさらに付加価値が付く。


ミルクソフトクリーム 胡麻がけ 胡麻の香りが好きな人には堪らない、アイスクリームと胡麻屋さんの胡麻のコラボレーションだ。店で販売する商品は全て胡麻の製品で、白黒胡麻、胡麻ふりかけ、胡麻餡、胡麻油、そしてアイスクリームに掛けられた胡麻で噛んで味わうことができる。個性を活かしながらコラボレーションするという非常に良いアイディアだ。


そしてカスタードケーキ。歩行者天国のメインストリートを歩くなら、カスタードチーズケーキについて語らないわけにはいかない。この香りにそそられるまま、歩いて店に辿り着いたら大正解。この店では、温かいタイプ、冷たいタイプ、それぞれのカスタードチーズケーキを販売している。ひとたび口に入れればすぐに溶けてなくなってしまう。使用するチーズと牛乳の品質が高いものであればこその味わいだ。


このパン屋さんは午前10時30分に開店するが、大体正午には売り切れてしまう。イーストが自家製のものかは尋ねていないが地元のバターと牛乳を使ったパンを販売している。フランスやイタリアのパンと異なる、まさに日本スタイルのパン屋さんだ。そいうのも、皮が非常に薄く、中の気泡は非常にキメが細かい。ソフトな食感で、もっちりとした(しかしカチカチではない)ヨーロッパのパンとは異なっている。バターパンという、中にバターを詰めているパンを注文した。バターはとろけ、パンの繊維に深く浸みこみ、使っている牛乳がとても良いものだと言うことがすぐさまわかる食感だ。かぐわしいバターの香りが喉の奥まで届き、柔らかいパンが口の中で溶ける。これだけでその日一日をハッピーで満ち足りたものにさせてくれる。



これらは、コミュニティで行われている、付加価値を高める素材加工例のほんの一部だ。料理もお菓子も、欠かすことの出来ない重要な3つの要素があると思う。作り手、方法、そして素材だ。この町では、特に、有機製法で質の高い素材、そして資源活用へのたゆまぬ努力について、協調したい。栽培から堆肥まで、全てが明確なコンセプトのものと、コミュニティ内の人々が協力し合って循環している。我々の国タイにおいても、農業組合が生産者、加工者、デザイン等、各部門と協力し合い、活動を始めている。湯布院をインスピレーションとするなら、それほど遠くない未来にタイの多くの県で湯布院のような町が誕生する日が来るのでは、と思うのだが、どうだろう?。



 

ライター

ナタポーン・ピンペット

クリエイティブ/話し手



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