プラチンブリーは小さな県で…えーと、タイのどこにあったか…正直に言おう、思い出せないと。プラチンブリーをタイ語や英語でどう綴るのかも分からない。そんな状態のまま、ほとんど何も知らないこの県に向けて出発したのだが、当然、道中はGoogleにお世話にならなければならなかった。
ネットを駆使してこの県の情報を収集し、出発して3時間余で到着した。GPSの最終目的地はアパイブーペート病院だったのだが、到着したそこは…なんだこれは!思ってたのと違うではないか。古い建物のある町やチャンタブリーのようなちょっとしたヴィンテージ感のあるところ、と表現した方がお分かりいただけるかもしれない。様々な要素がうまく混じり合ったルアンパバンのような雰囲気なのだ。ラーマ5世王に忠誠を誓っていたチャオプラヤー・アパイブーペートは、この建物をラーマ5世の行幸の際にご滞在される施設として建設したが、完成を前にラーマ5世が崩御されたため、アパイブーペートビルと名付けて、病院として使い、漢方薬を作る場所として提供したのだ。
コロニアル調の建物についてだけでなく、アパイブーペート式の漢方薬についてもお話したいが、その前に、病人食についても是非触れておかなければならない。声を大にして言わせていただこう、この病院の食事は、「普通ではない」と。異なる組織の担当者同士が協力して、真に安全な食事を提供しているところを、私はまさに初めて目にしたのだった。
そう、この病院全体で患者に提供される食事は、「農家直送の100%有機素材」によるものなのだ。有機素材100%となぜ言えるのか、どうして確信できるのか、以下を読んでもらえれば、3回飛び跳ねて驚かれること請け合いだ。
1回目の驚き:チャオプラヤー・アパイブーペート病院はベッド486床で有機農業科を持つ。チャオプラヤー・アパイブーペート基金が、素材が取りまとめ、厨房に納品される材料について農家を確認して回る。もちろん、数量がまちまちな素材を季節ごとに集めたり、時間通りに患者に対して十分な量を納品をしてもらうために農家に決まりを守ってもらったりすることは、容易なことではない。有機農業科のみならず、病院の栄養管理課と協力して、素材の旬や自然状況に合わせて農家が届けてくれる素材を基に、臨機応変にメニューを組み立てている。この厨房で毎日手書きでメニューが書かれているのはこのためだ。
2回目の驚き:病院内の協力体制以外にも、県の農業科と連携して、地域の農家に対して、病院食に農薬を増やすのではなく、患者を治癒する食事のもととなる素材が重要であることを啓蒙している。これは、農業の担当者間の重要な連携体制であり、真に市民のための公衆衛生であると言えるものだ。
3回目の驚き:病院が、農家から一年を通して仲買人を通さずに買い取り、患者のために病院に直接届けることができる、という価格保証の仕組みを持っている。価格を見ても、巷の市場で売られているものと何ら差は無く、かつて見られたようにこちらの方がより高い、ということもない。
これらは実際に起きたことで夢ではない。本当にあったことで、バンコクからそれほど遠くないところであったことなのだ。小さな町で、協力の輪を広げ、これは誰の仕事だ、といった考え方ではなく、県全体の人間の命に対する責任を負っている。次回は病院と民間レベルのその他のネットワークへの展開についてお話したい。
プラチンブリーでわずか1日過ごしただけだが、真の意味で安全な食物と持続可能な農業のモデルとなる県を目指す、人々から羨望されるような町であると感じた。
ライター
ナタポーン・ピンペット
クリエイティブ/話し手
ライター
ピー・プーこと パカーマート・クルートーン
チャオプラヤー・アパイブーペート病院
栄養学グループリーダー 栄養士
ピー・レックこと チャウィーワン・プーワシッティターウォーン
チャオプラヤー・アパイブーペート病院基金
有機農業課 有機農業促進担当者
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