実際にそれをやってみないことには、恐らく生まれながらに技術や特殊技能が備わっていることを知っている人などいないだろう。私は、子どもの頃、台所に入るのが大嫌いだったのを覚えている。母がほぼ毎日三食家族に食事を作っているシーン、学校に行く前朝から放課後帰宅してからも、ほぼ毎日かまどの前に立っていたのを思い出す。当時、子ども心に、ご飯を作るということはなんて大変な仕事なんだ、と思ったものだ。しかし、娘として、母といっしょに台所に入って手伝わなければない、それがたとえわずかなものであっても、母親が娘に対して持つ喜びであったからだ。
野菜を洗い、切って、炒めて、調味する、果物を野菜に盛り付ける、という、母もまた祖母から伝え受けたように、私も主婦としての経験を積んでいった。
子どもの頃のことで覚えているのは、私は、母の気に入るような助手ではなかったということだ。私の母と言えば、いちいち決まり事が多く、それでいてクリエイティブな要素も併せ持つ。料理によっては、こんなものかしら、と予想しながら作っているものもあるが、実際出来上がったものは、家族にとっても美味しい料理として食べられたのだ。
何か質問したり母の思い通りにならないようなことをしようものなら、すぐさま「全然創造力がないわね…」などと返されてしまう。それはそれは厳しい、心を突き刺すような言葉であったが、何年も経ってみて、農業に携わり自分で野菜を栽培するようになると、その当時の気持ちが誇りとなって蘇ってきた。いつのまにかあの時のように自分で料理をすることができるようになり、その時々で経験したことによりイメージが湧いてきて出来た料理もある。
家の裏庭で有機農業をすることを選択したという運命に、感謝の気持ちが湧いてきた。人生の価値が高まり、清潔な食事と新鮮な空気を胸いっぱい吸うことができる。自分自身ではコントロールできないような嫌な事に出くわしたとしても、弱った心を癒す場所がある。人間は本来、この地球上で、ちょうど良いバランスで、いかに食べ、生きるかべきか、という幸福な人生について分からせてくれる。
得られた答えとは、食べるものを育て、育てたものを食べる。これこそ私が食事に対して大切にしている究極だ。質の良い満腹感を得て、ぐっすりと眠り、肺一杯に呼吸をする。これらこそ、人生の質にとって重要な基本要因となるものだ。この後、私の裏庭菜園の3つのメニューについてお話したい。私がとても気に入っているメニューで、ぜひお薦めしたいものだ。
キュウリの四川和え
この料理は、バンコクの中国料理店の料理からインスピレーションを得たものだ。菜食メニューでもあり、この料理の写真を見てすぐに、これなら食べても太らない!とピンときた。それで注文して実際に食べて見ると、味も美味しかったのだ。そこで、何でこのような味にしているのだろう、と考えてみた。キュウリとパクチーを植えるのに適した季節になると、よく作って定期的に食べるメニューのひとつとなった。
材料
若いキュウリ、赤唐辛子(あまり辛くないもの)、中国パクチー、ニンニク、胡麻油、シイウカーオ(タイ醤油)
作り方
1. キュウリを洗って、両端を切り、冷水につける。パクチーも一緒に冷水につける。
2. 赤唐辛子を細い千切りにする。種が少しついていると辛味も付いて良い。
3. ニンニクを小さく刻み、ごま油にニンニクと唐辛子入れて混ぜる。そこへシイウカーオを入れ、塩味がやや強めで辛味も少々感じる具合に調味する。注意点として、有機栽培のキュウリは甘味が感じられるので、味を少々強めにしておかなければならない。
4. 和え衣が出来上がったら、キュウリとパクチーを、一口サイズの拍子切りにする。キュウリの冷たさとみずみずしさを失くさないように、力を入れずに軽くスピーディーに混ぜる。そしてパクチーをふりかけ、細切りの赤唐辛子を飾り彩り良くする。白の炒りごまがあれば、さらに味を良くしてくれるだろう。無ければ気にしなくて大丈夫。
初めてこの料理を作ったのは、ベルギー人の女性にお出しした時のことだ。菜食メニューを作って欲しいという彼女のリクエストに応えて作ってみたが、結果は大好評、合格!これで私の特料理の1つとなった。これをカオマンガイといっしょに食べればより美味しいと感じられるだろう。キュウリの栽培に適した季節…7月~11月、そしてパクチーは11月~2月だ。
キュウリとパクチーは自家栽培しているので、毎年種も採取している。自分の種苗銀行との間に安定した関係が築けていることの表れだと言える。母親の冷蔵庫の残り野菜で始めたわずかな畑が、今や丸々1階分、多種多様な種でいっぱいになった。毎年、季節ごとに適した種を持ち出しては、育て、収穫し、食べ、そして次の栽培のための種子を採取する。毎年、私の畑の気象条件に合わせて、少しずつ遺伝子が発達することで、栽培がしやすくなることもある。
適切なタイミングで種を採り、丁寧に育てれば、病原菌に対抗するための化学物質を使う必要がなくなる。私のパクチーの種は、市場で一般的に売られているようなピンク色をしていない。四川和えを作るほかに、パクチーは種を使って他のメニューの香辛料としても用いられる。
まだあと2つの料理のご紹介が残っているので、材料の成長を待つジャックフルーツの3つの料理(後編)で、引き続きお読みいただきたい。タロイモ好きとジャックフルーツ好きへのメニューだ。
ライター
ナタカナーン・プリ―チャーボリスットクン(ヌン)
農家
安全食品生産者
ナチュラルシャンプー・石鹸生産者
自給自足分野講師
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