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海外からインスパイアされる農業:湯布院#2



「地産地商 満ち足りた仕事」


前回では概要についてお話したが、今回は、我々同様10年という年月をかけて仕事をしてきた人の夢について触れたい。そう、「満ち足りた仕事」というタイトルの通りだ。この町の人々の仕事は、主に3つだ。すなわち、農業、商店、宿泊施設だ。シンプルな生活を営む者にとって、ここは夢のような町だ。朝起きて畑の野菜・果物や畜産品の世話をし、昼前には商品を販売、日が落ちたら戸締りをして寝る…。この町のもう一つの名物は、町の時計だ。と言っても時計塔のことではない。店もホテルも、町中同じ時刻の6時に始まる。ラジオから町中に流れる可愛らしい音楽によって目を覚まし、商店は9時30分から17時30分に営業する。我々観光客としても、食事の時間等を必然合わせることになる。


朝食後、自転車で町中を走ってみる。買い物通りは3分で通り過ぎてしまう。山に囲まれた美しいこの町は、農家が真剣に取り組んでいる田んぼやオーガニックの畑、果樹園があり、そこで収穫されたものがレストランやショッピングストリートの開店時間前に納品される。従って、レストランもカフェも、食事の提供を始めるのは、農家が収穫物を納品し終えてから、大体10時30分ごろからだ。もちろん、農家が直納するだけで市場が無いわけではない。湯布院での3日間の間には朝市を見かけなかったが、野菜や生鮮食品を道端で販売する店が時々見られた。野菜や果物、調味料などが揃っており、近所に住む人たちや我々のような観光客も立ち寄っては、獲れたてのものを食べ歩くことができる。


新鮮な食物と言えば、みかんに直接穴を開ける、というこの町のみかんジュースの販売アイディアが何とも秀逸だ。農家が直納した獲れたてのみかんを町の歩行者天国のフードトラックに届ける。店主は、きれに洗浄しみかんをキンキンに冷やす。お客からの注文が入ると、店員が芯を取り除き、その後特殊なミキサーで中身全体を細部まで撹拌し、500円で提供する。店の前でお客は出来立てのジュースを飲み、器として使っていたみかんの皮を透明なトレーの上に置く。夕方閉店後、農家が皮の一部を引き取り、有機肥料の材料として用いたり、漬物やみかんピールなどの加工品に利用したりする。このように、ここでは生ごみがほとんど出ない。コミュニティの仕事と環境が循環しているのだ。



タイトルでも言ったように、地産地商だから町を出る必要が無い。毎年、湯布院には、数百万人に及ぶ観光客が、農業の町とコミュニティの仕事の改革を見に訪れる。彼らは日本一美しいと言われる鉄道路線「ゆふいんの森号」を利用してやって来る。この列車が九州の農家の3拠点、福岡、湯布院、別府を通過することで、より一層農家の人々が農業や加工に対する意識がより一層高まった(次回で詳しく取り上げる予定)。地元で目覚め、地元で働き、地元で生活をする。たったこれだけのことだが、実は多くの人が羨むところではないだろうか。



ここで日本の農業の考え方について少しお話したい。日本は島国であるため、国内の食糧供給源は重要で、食糧の安定供給を保たなければなければならないことから、政府が農業を推進している。また、土地税法により、使われていない土地でも高税率で納税しなければならない義務を負うことから、ただ放置されている土地というのはまず無い。日本の農家は、専業ではなく、土地を持つ人の田んぼでパートタイムで米作りをしている人もいる。各家族の持つ土地は、タイの地方のように何十ライにも及ぶものではなく、小さくて少ない。従って、米作りにそれほど時間を費やすこともない。田植えから稲刈り、精米まで、テクノロジーを利用し、雨水に頼らずとも灌漑設備も整っており、田んぼに直接配水される。日本の農業の発展の助けとなっているのが、組合として農家が集まっていること(JA)だ。交渉の権利を持ち、仲買人を廃止し、市場から溢れるほど作り過ぎないように、良質な産品を産出する。より良いものを作ろう日本人の気質により、より品質の高い製品が生み出され、高値で販売できるようにもなる。



我々の国タイでも、鉄道によって点在する古い町に赴くことができる。かつては鉄道で農業産品を各地域へと運搬していたであろうが、現在では、生活・観光スタイルも姿を変えてしまった。いや、どうだろうか。タイの鉄道も、湯布院のケースと同様に、農家と観光客を結び付けているかもしれない。有り得ない話ではない。


 

ライター

ナタポーン・ピンペット

クリエイティブ/話し手



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